広告運用Tips

代表的な広告指標とKPI設定の具体的な方法

インターネット広告は、様々な広告配信結果をデータとして見ることができます。その為、それらのデータを上手に活用することで、自分の手で広告配信の成果を高めていけることが大きな魅力であります。

しかしながら、見ることができるデータの種類が非常に多く、データの海に溺れてしまうことも少なくありません。どの指標がとりわけ重要なのかを判断するのは簡単ではないかもしれませんが、まずは代表的な広告指標を理解して、広告戦略の立案・実施に繋げていくことから始めてみましょう。

目次

  1. 広告施策の関係者が知っておくべき広告指標
  2. KPI設定における考え方と具体的な方法
  3. 必要に応じてKPI・目標値の見直しも必要
  4. KPI・目標値を設定することで課題特定に繋がり、広告配信の改善施策が打てる

広告施策の関係者が知っておくべき広告指標

Google広告・Yahooプロモーション広告・Facebook広告など、主要な広告媒体の管理画面にアクセスするとたくさんの広告指標を確認することができます。普段から頻繁にチェックする広告指標もあれば、そうではない広告指標までかなりの種類があります。初めて管理画面にアクセスした時はその種類の多さに驚くかもしれませんが、まずは代表的な広告指標から覚えていけば大丈夫です。

認知効果に対する代表的な広告指標

商品・サービス、もしくはブランドの認知度向上を狙った広告施策を実施する場合における代表的な広告指標は以下になります。どれだけの広告表示回数を得て、どれだけのユーザーに広告表示できたかを確認し、広告投資の良し悪しを判断します。

広告指標名 内容
インプレッション数(Imp:Impresion) 広告の表示回数
インプレッション単価(CPM:Cost Per Mille) 広告表示1,000回あたりの広告費
リーチ(Reach) 広告表示されたユーザー数
フリークエンシー(FQ:Frequency) 1ユーザーあたりの広告表示回数

広告管理画面に表示されるデータ、もしくはそれらのデータを加工することで得られる広告指標は上記の通りですが、認知度向上について更に深掘りしたデータを取得したい場合、上記データに加えて別途アンケート調査などを実施すると良いでしょう。

誘導効果に対する代表的な広告指標

商品・サービス、もしくはブランドの理解促進やサイト(LP)への誘導を狙った広告施策を実施する場合における代表的な広告指標は以下になります。広告表示に対してどれだけクリック数を得られているか確認し、広告投資の良し悪しを判断します。

広告指標名 内容
クリック数(Click) 広告がクリックされた数
クリック率(CTR:Click Through Rate) 広告表示に対して広告がクリックされた確率
クリック単価(CPC:Cost Per Clock) 広告クリック1回あたりの広告費

商品・サービス・ブランドの理解促進においても、サイト(LP)への誘導においても、ユーザーをサイトへ誘導することに加えて、サイト訪問時のユーザーの行動を併せて分析していくとより良いでしょう。

その為には、広告配信開始前のタイミングでサイト側にアクセス解析ツールやヒートマップツールを実装しておくことが必要です。ひと手間かかりますが、分析の幅も深さも増し、それに伴って広告最適化や広告戦略立案もより効果の高いものになっていきます。

獲得効果に対する代表的な広告指標

商品・サービスの販売や資料請求・会員登録を狙った広告施策を実施する場合における代表的な広告指標は以下になります。広告のクリック数に対してコンバージョンに関する指標の数値が想定通りになっているかを確認し、広告投資の良し悪しを判断します。

広告指標名 内容
コンバージョン数(CV:Conversion) 成果の獲得数
コンバージョン率(CVR:Conversion Rate) 広告のクリック数に対する成果獲得の確率
コンバージョン値(Conversion Value) 成果獲得によって得られた売上金額
顧客獲得単価(CPA:Cost Per Acquisition) 1件の成果獲得(顧客獲得)にかかった広告費
オーダー獲得単価(CPO:Cost Per Order) 1件の成果獲得(注文獲得)にかかった広告費
広告費用対効果(ROAS:Return On Advertising Spend) 広告費に対して得られた売上金額の割合

上記の広告指標の数値改善をする場合、商品・サービスの値下げなど販売方法を変えることもありますが、まずは広告クリエイティブやサイト(LP)の改善を行うところから始めることが多いです。

その場合、広告クリエイティブの改善であれば広告管理画面からABテストを実施し、サイト(LP)の改善であればGoogle OptimizeなどのABテストツールを導入してABテストを実施すると良いでしょう。ビジネス成果には季節要因も絡んできますので、同時期にテストを実施できる環境を構築してABテストしましょう。

プラスアルファで覚えておきたい広告指標

広告は、配信して終わりではありません。定期的に広告配信結果を分析して、分析結果を次なる広告最適化などに活用することでどんどん成果が改善していきます。その際、当然ながら「伸びしろが大きいところに調整を加える」方がより大きなビジネスインパクトを出せます。その伸びしろを確認できる広告指標が以下です。

広告指標名 内容
インプレッションシェア(Impresion Share) 広告表示機会に対して実際に広告表示された割合
インプレッションシェア損失率(Lost Impression Share Rate) 広告表示機会に対して広告表示されなかった割合

既存の広告施策の中から成果の良いターゲティングが見つかっても、それ以上の広告配信機会がなければ、日予算・入札単価をいくら引き上げてもより多くの成果は獲得できません。直近の成果だけに捉われず、伸びしろも考慮して広告最適化を行っていきましょう。

KPI設定における考え方と具体的な方法

あまりに当たり前ですが、広告配信を行う際、どういう結果が得られればその広告配信は良かったと言えるのかを事前に決めておくことが大事です。これはいわば「ゴールの設定」であり、ゴールが分からないというのは、向かっている方向が正しいのか分からぬまま暗闇の中を歩いているようなものです。

逆に、ゴールさえ分かっていれば、向かっている方向が大雑把に正しいのかどうかくらいは誰でも分かります。結果、広告調整が多少上手くいかなくとも、大きな失敗にはなりにくくなるというわけです。もちろん、ゴールが明確であり、かつ広告調整も適切に行われていれば、広告配信による事業拡大が格段に成功しやすくなるというのは言うまでもありません。

それでは、広告配信のゴールとも言えるKPI設定について、考え方と具体的な方法を見ていきましょう。

広告配信の目的を決める

会社設立や新規事業立ち上げなどを行う場合もそうですが、最初にやることは「広告配信の目的を決める」ことです。先に述べた「認知効果」「誘導効果」「獲得効果」のどれを狙った広告配信を行うのか決めておきましょう。広告配信の目的が明確になることで、主に確認すべき広告指標は自ずと絞り込まれていきます。

LTVを考慮してKPIと目標値を考えるのが基本

広告成果の良し悪しを判断するKPIを決める場合、KPIとする広告指標とセットで目標値も決めます。例えば、広告費100万円を投資して獲得したコンバージョン数が10件なのか10,000件なのかでは、成果に対する良い・悪いの評価が全く異なります。ですので、KPIとする広告指標を決めたら、その目標値も同時に決めます。

その際、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値。1人の顧客から生涯にわたって得られる利益。)を考慮してKPIと目標値を決めるのが良いでしょう。なぜなら、1回のコンバージョンで得られる利益をもとに目標値を決めるとどうしても目標値は厳しいものになり、相当確度が高いユーザーのみにしか広告配信できず、事業拡大するほどの成果は得られなくなってしまうからです。

目的に関連性の高い広告指標をKPIとする

先に述べた「目的に対する代表的な広告指標」について、改めて一覧化したものが以下です。目的と広告指標がちぐはぐにならないよう注意しましょう。

目的に対する代表的な広告指標

繰り返しになりますが、KPIとなる広告指標を決定したら、その目標値も併せて決めるようにしましょう。

CPA / CPO と ROAS の使い分け

実態として、広告配信の目的は「獲得」であることが多いです。「認知」や「誘導」はすぐに売上を増やすものではなく、より長期的な事業目標を達成する目的であり、大きなマーケティング予算が必要になる為、一部の企業でしか実施するのが難しいでしょう。

では、多くの企業の広告配信目的が「獲得」であるなら、KPIとしては何を設定しているのか。それは「CPA」や「ROAS」です。その為、ここでCPAとROASの使い分けについて解説しておきます。

広告指標名 用途
CPA / CPO 1件の成果獲得にかかった広告費を表す為、コンバージョンによって得られる価値が単一の場合に用いられる。例えば、単一商品の販売のみ、資料請求の促進のみ、会員登録の促進のみを狙った広告施策を実施している場合などに適している。
ROAS 広告費に対して得られた売上金額の割合を表す為、コンバージョンによって得られる価値が複数ある場合に用いられる。例えば、複数の商品の販売、資料請求や会員登録といった複数のユーザーアクション促進を狙った広告施策を実施している場合などに適している。

上記の通り、コンバージョンの価値が単一か否かによって CPA / CPO とROAS は使い分けます。単一商品の販売か否かではなく、あくまで計測対象となるコンバージョンの価値が単一か否かで使い分けますので、ご注意ください。

必要に応じてKPI・目標値の見直しも必要

ここまでの内容でKPI設定についての考え方と方法については解説しました。この内容をもとにKPIと目標値を設定すれば、広告配信は開始して問題ありません。

しかし、一度決めたKPIや目標値は永遠に変えてはいけないというものではなく、むしろ状況に応じて柔軟に変えていくことが必要です。どういった場合にKPI・目標値の見直しが必要か以下に代表的なケースを解説しました。

ケース1.広告配信の目的が変わった

事業戦略によって広告配信の目的は決まってきます。新商品のリリース時であれば認知を狙った広告配信をするかもしれませんし、目の前の売上が減少していれば獲得を目的とした広告配信をするかもしれません。

事業の状況は、市場(消費者)・競合・自社のすべての状況が影響しあって成り立っておりますので、未来の事業戦略は現在の事業戦略と異なることの方が多いでしょう。その場合に、事業戦略が変わることで広告配信に期待する効果も変わってくるようであれば、KPIや目標値もそれに合わせて変えていく必要があります。

ケース2.広告配信の目的は変わっていないが、目的達成とKPI・目標値に関連性がなかった

この記事の内容に書かれた「目的に対する代表的な広告指標」を参考にKPI設定すればこの問題は基本的に起こりませんが、実際に「認知度向上目的なのにクリック数をKPIにしてしまう」などの「目的とKPIがちぐはぐな状態」で広告配信を実施してしまうケースがあります。

広告配信開始後であっても、誤ったKPI・目標値の設定に気付いた場合は、早急に適切なKPI・目標値を定め直すようにしましょう。広告配信にはたくさんの経営資源(ヒト・モノ・カネ)を投資しますので、このような状況になっているようでしたら、1日でも早いKPI・目標値の再設定が重要です。

ケース3.広告配信の目的は変わっていないが、なかなかKPIの目標値が改善していかない

適切な広告最適化が行われていない場合、もしくはKPIの目標値が厳しすぎる場合にこの問題が起こります。その場合、まずは考えつく限りの広告最適化案を実施し、どんどん手数を打っていきましょう。それでもKPIの目標値が改善しない場合は、広告配信の目的自体の変更も含めて、KPI・目標値の見直しを行っていく必要があります。

広告配信の目的を変更するのは大変なことであり、自分の社内のポジション次第では関係者にその提案をするだけでも一苦労ということもあるでしょう。しかし、成果が悪いまま広告配信を放置することの方がいけないことですから、数多くの広告最適化案を実施しても事態が一向に良くならないのであれば思い切って広告配信の目的変更を検討してみましょう。

KPI・目標値の設定により課題特定に繋がり、広告配信の改善施策が打てる

インターネット広告では、様々な広告配信データを確認することができます。そのデータは日々数値変動が起こっており、すべてを完璧に把握するのは至難の業です。そんな無理なことをやろうとするのではなく、自社の広告配信の目的に関連した指標をKPIとして設定し、それに目標値を定めて広告配信することで、今この瞬間に問題が起こっているのか否かを瞬時に判断できるようになります。そして、問題が起こっているか否かさえ分かれば、あとは問題が起こっている時にKPIを要素分解して課題特定・解決していくだけです。

定めたKPI・目標値を基準として広告運用するのは、速度計を見ながら自動車を運転するのに似ています。目標値に対して数値が大きすぎても小さすぎても安心できる状況ではないということです。例えば、ROAS1,000%が目標値だったとして、ROAS1,500%であったなら「確度の高いユーザーばかりに絞り込みすぎて広告配信しており、販売の機会損失が発生しているのではないか。」と考えられますし、逆にROAS500%であったなら「確度が低いユーザーへの無駄な広告配信が多すぎるのではないか。」と考えられます。

このような仮説を立てられるのも、KPI・目標値を設定しているからこそです。広告施策の関係者間で有意義な議論を行い、更なる事業拡大を実現する為にも、KPI・目標値の設定・必要に応じた見直しを行っていってください。