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アトリビューションの考え方・評価モデル・分析方法・施策実施手順まとめ

アトリビューション

ユーザーの集客・エンゲージメントを行うチャネルが多様化・複雑化する中で、目的に応じた効果的なチャネルは何なのかを判断するのが難しくなってきています。企業は様々なチャネルを経由してユーザーと接点を持っているのが一般的ですが、現在は「広告経由」「検索エンジン経由」「SNS経由」など複数のチャネルがあり、経路の違う各チャネルをどう評価すべきか判断しにくいからです。

更に、例えば「広告経由」だけを見ても、「Google広告経由」「Yahoo!広告経由」「Facebook広告経由」とチャネルは細分化されていきますし、もっと言えば「Google広告の検索連動型広告経由」「Google広告のディスプレイ広告経由」「Google広告の動画広告経由」などと細分化してチャネルを捉えることもできます。チャネル粒度を細かく捉えれば捉えるほど、各チャネルを評価するのは大変になってきます。

このような状況でマーケティング戦略立案・実施における正しい成果の判断やそれに伴う意思決定を行う為に、アトリビューションという考え方がとても大事になってきます。それでは、アトリビューションについてその内容から活用方法まで解説していきます。

目次

  1. アトリビューションの考え方
  2. アトリビューションの代表的な評価モデル
  3. アトリビューションの分析方法・手順
  4. アトリビューション分析に挑戦する方へ

アトリビューションの考え方

まずはアトリビューションというものついての理解を深めていきましょう。アトリビューションがどういったものなのかの基本知識を理解せずに活用方法を学ぼうとしても理解できませんし、理解できなければマーケティング戦略の立案も実施もできません。

アトリビューションとは?

アトリビューションとは、ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点を評価するという考え方です。以前は、直接的にコンバージョンに繋がった接点(「終点」「ラストクリック」などと言う)のみを評価するのが一般的でしたが、アトリビューションの考え方ではコンバージョンに至るまでの複数の接点を評価対象とします。

接点とは?

接点とは、企業がユーザーと直接接触した機会のことを言います。企業がユーザーと直接接触する機会ですので、バナー広告でユーザーと接触するだけ(広告表示のみでユーザーのサイト訪問は無し)も接点ではありますが、現状は「ユーザーのサイト訪問に繋がった機会(広告のクリックなど)を接点とみなす」のが一般的です。

なぜ、複数の接点を評価すべきなのか?

通常、ユーザーが商品を購入するまでには、認知・商品理解・比較検討を経て購入に至ります。そして、必ずしも1度のサイト訪問で全てのステップを経るわけではなく、様々なチャネルを経由して複数回のサイト訪問を行い全てのステップを経る方が多いはずです。

実際、自分が何かを購入する際の行動をイメージしてもらえると分かりやすいかと思います。動画サイトを視聴している時にバナー広告を目にして何かの商品販売サイトに訪問したとしても、すぐさま商品購入はしないでしょう。商品が気になっても、その後に情報収集などを行って何度も商品販売サイトを訪れてから商品購入に至るはずです。

繰り返しになりますが、ユーザーは認知・商品理解・比較検討を経て購入に至ります。ですので、コンバージョンに至るまでの接点はそれぞれがコンバージョン獲得に対して何らかの貢献をしているはずです。その為、最後の接点だけでなく、その前の接点も評価するのがより良い評価方法となります。

接点に対する評価の例

例えば、ユーザーが「Google広告」「YouTube」「Facebook広告」「Yahoo!検索」という順番でそれぞれを経由してサイト訪問し、コンバージョンに至ったとしましょう。その場合、全ての接点のコンバージョンへの貢献度が全く同じである場合は、獲得した1件のコンバージョンに対して以下のように評価します。

接点評価の例 ※表中の「CV」は「コンバージョン」という意味

接点 貢献度
Google広告 0.25CV
YouTube 0.25CV
Facebook広告 0.25CV
Yahoo!検索 0.25CV

1件のコンバージョンに対して、各接点の貢献度に応じてコンバージョンを割り振る形になります。なお、上記の例では各接点のコンバージョン貢献度が全く同じであるという場合のコンバージョンの割り振り方を例として示しておりますが、他の割り振り方もありますので、後述しております。

効果的なケースとそうでないケース

アトリビューションという考え方は非常に重要です。ですが、全企業が同じように実施して同じように成果を得られるマーケティング戦略・戦術が存在しないのと同様に、アトリビューションが効果的なケースとそうでないケースが存在します。

アトリビューションは「ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点を評価する」ものであり、接点を正しく評価するから重要度の高い接点が可視化され、そこへ経営資源を集中投下するから大きな成果を獲得することができるようになります。

その為、「ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点が少ない」ケースではアトリビューションは効果的ではないことがあります。例えば、低価格の商品・サービスを提供している場合や無料のものを提供している場合などは「ユーザーが購入や申込みといったアクションをする上での心理的ハードルが低い」為に比較検討期間が短く、接点が少ないことがあります。

アトリビューションの代表的な評価モデル

先の例では「全ての接点が同じコンバージョン貢献度である」という前提で説明をしましたが、コンバージョン貢献度は接点によって違うということも考えられます。

例えば、新しいスマホを購入しようと思った時、同じ機種のスマホを勧められるにしても、親しい友人に勧められるのか営業マンに勧められるのかでは購入の意思決定に与える影響は異なりますよね。親しい友人に勧められた方が納得感や心理的安心感があり、より意思決定に大きな影響を受けるはずです。

このように、一言で「接点」と言っても、そこから与えることのできる影響度は異なりますので、「全ての接点が同じコンバージョン貢献度である」という評価モデルの他にも様々な評価モデルがあります。ここでは代表的な評価モデルを解説していきます。

終点モデル

終点モデル

ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点のうち、コンバージョン直前の最後の接点のみに貢献度を割り振る評価モデルです。コンバージョン直前だけを評価する為、短期的なコンバージョン獲得だけが重要である場合はこの終点モデルが適しています。一方、「今すぐ客」だけにリーチするだけになりますので、中長期におけるマーケットシェア拡大を狙っていく場合には不適切な評価モデルとなります。

減衰モデル

減衰モデル

ユーザーがコンバージョンに至るまでの全て接点に貢献度を割り振りるものの、コンバージョンに近い接点の方がより大きな貢献度を割り振る評価モデルです。短期的なコンバージョン獲得を重要視していたところから徐々にアシストコンバージョンなども評価し、少しずつ慎重にマーケットシェアを取りに行こうと考えた場合に適した評価モデルです。短期的なコンバージョン獲得からマーケットシェア拡大へ事業戦略をリスク少なく移行させる時に適しているが故に、事業戦略移行に時間がかかるというデメリットはあります。

線形モデル

線形モデル

ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点に対して、全て同じ貢献度を割り振る評価モデルです。短期的なコンバージョン獲得から中長期におけるマーケットシェア拡大という幅広い事業戦略に対してバランスが取れた評価モデルと言えます。ただし、バランスを取っているが故に、特定の課題に対する解決策には繋がりにくい可能性があります。

始点モデル

始点モデル

ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点のうち、最初と最後の接点に大きな貢献度を割り振りながら、その間の接点には小さい貢献度を均等に割り振る評価モデルです。短期的なコンバージョン獲得への貢献度は一定割合で評価したいが、これからマーケットシェア拡大も狙っていきたいという事業戦略の移行期に適した評価モデルです。ただし、将来の見込客へのアプローチを強化していく評価モデルの為、終点モデルや減衰モデルと比較して短期的なコンバージョン減少やコンバージョン単価高騰が起こりえます。

始点モデル

始点モデル

ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点のうち、ユーザーと企業の最初の接点のみに貢献度を割り振る評価モデルです。最初の接点だけを評価する為、中長期におけるマーケットシェア拡大を見据えてコンバージョンしそうなユーザーへ早めのアプローチをしたい場合にこの終点モデルが適しています。ただし、いわゆる「今すぐ客」だけにアプローチするわけではなく、これから興味関心を持ち始めるであろうユーザーなどへのリーチを評価する為、短期間でのコンバージョン獲得には繋がりにくいです。

データ主導モデル(データドリブンモデル)

データ主導モデル(データドリブンモデル)

ユーザーがコンバージョンに至るまでの接点に対して、機械学習を活用して動的に貢献度を割り振る評価モデルです。最初の接点や最後の接点といった特定の接点に重みづけをするのではなく、全てのコンバージョンパスを分析し、接点ごとの貢献度を算出した上で動的に貢献度を割り振るものとなります。

これから興味関心を持つであろうユーザーも既に購入間近であるユーザーも全てを対象として「現在・未来問わずコンバージョンしそうなユーザー」との接点を評価できる為、短期的なコンバージョンを獲得しながら中長期におけるマーケットシェア拡大も狙うことができるようになります。

ただし、機械学習には膨大な学習データが必要となり、大きな予算での広告配信含めてサイトへのトラフィックを相当増やさないとデータ主導モデルで成果計測することすらできません。その為、現状は、潤沢なマーケティング予算を持っている大企業向けの評価モデルとなっています。

評価モデルの使い分け

評価モデルの使い分け
※クリックすると拡大します

先に説明した通り、アトリビューションの評価モデルにはそれぞれに特徴があり、企業にとってはそれがメリットにも、デメリットにもなりえます。評価モデルごとの特徴は、上の図の通りです。自分たちの事業戦略に合った評価モデルを取り入れましょう。

アトリビューションの分析方法・手順

アトリビューション分析について、その目的の再確認及び実施の流れを解説します。事業の課題解決を目指して、アトリビューションをどのように進めていくのか理解を深めていきましょう。

総コンバージョン数を最大化させる為に分析する

アトリビューション分析は、事業課題解決に向けてそれに適している評価モデルを用い、総コンバージョン数を最大化させる為に行います。アトリビューション分析の結果を踏まえて接点ごとの経営資源配分比率を調整し、その結果として総コンバージョン数が増加していれば成功です。

なお、総コンバージョン数が増加したか否かの判断は、必ずしも短期間で行うものとは限らないことに注意が必要となります。最も短期間でのコンバージョン獲得を評価する終点モデルで貢献度を判断し、高確度なユーザーへリーチしやすい機会の獲得へ経営資源を集中投下したとしても、高額商品を販売しているケースなど「ユーザーの比較検討期間が長い商品を取り扱っている場合」はユーザーと接触してから実際のコンバージョンを獲得するまでに比較的長いタイムラグが発生するからです。

結果の正しい理解と適切な意思決定の為に、「タイムラグという時間的なことも考慮しつつ、アトリビューション分析の結果について良し悪しを判断する」ということを覚えておきましょう。

コンバージョン計測基盤を整備する

何事も準備は大事ですが、アトリビューション分析においても同様で、まずはコンバージョン計測基盤をしっかりと整えましょう。現在は様々なアクセス解析ツールが存在しますので、アトリビューションの評価モデルごとにコンバージョン貢献度を比較できるアクセス解析ツールのタグをサイト全体に設置し、正常にタグ発火していることを確認しましょう。

タグマネージャーでタグ管理をしている場合など、サイト内の一部のページでアクセス解析ツールのタグが正常に発火していないといったケースもあります。複数のサブドメインを使ってサイト管理している場合、複数ドメインでサイト管理している場合、そしてサブドメインも複数ドメインも使用していないがそもそものサイト構造が複雑な場合は注意が必要です。

なお、無料でも使え、かつアトリビューション分析も行えるアクセス解析ツールとしてはGoogle Analyticsが有名です。無料とは思えないほど高度な分析が行えるアクセス解析ツールで、大手企業含めGoogle Analyticsを導入している企業は非常に多いです。

比較検討期間を考慮し、適切な評価モデルでのデータを集計・分析する

正常にコンバージョン計測が行われるようになったら、アトリビューション分析を行っていきます。具体的なアトリビューション分析の流れは以下の通りです。

  1. ユーザーの比較検討期間(終点からコンバージョン達成までのタイムラグ)を定義
  2. その期間の分だけ遡り、自社の課題解決に適した評価モデルでデータを集計
  3. 集計されたデータから貢献度の高い接点を見つけ出し、経営資源の再配分を実施
  4. その後、経営資源再配分の効果を確認しながら、2~3の繰り返し

何度か述べましたが、終点からコンバージョン達成までのタイムラグの考慮を忘れないようにするのがポイントになります。データ分析と言うと、なぜか昨日までのデータを集計するのが良いと思い込んでいる方もいますが、「ユーザーは比較検討してからアクションする」という基本的なことを絶対に忘れてはいけません。

データの対象期間も含め、正しいデータを正しく扱わなければ、そのデータ集計・分析には何の価値もありません。むしろ、成果の誤った解釈やそれに伴う誤ったマーケティング戦略立案・実施に繋がってしまうリスクを考えると、マイナスの価値となってしまう危険性すらあります。注意していきましょう。

アトリビューション分析に挑戦する方へ

コンバージョンの評価と言えば、以前は「終点モデル」での評価が一般的でした。しかし、現在は「目的に応じた適切なアトリビューションモデルでの評価」を行う企業が増えてきており、以前通りの終点モデルだけでコンバージョンを評価していると競合企業にマーケットシェアをどんどん奪われていってしまいます。

大事な経営資源をマーケティング活動へ投下するのであれば、費用対効果の高いチャネルへの投下配分を強化すべきでもありますから、アトリビューション分析を活用してより効果的なマーケティング活動を行っていきましょう。