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運用型広告インハウス化を成功させるには?

運用型広告インハウス化

インハウス化とは、広告運用を代理店にお願いするのではなく、自社で行うことです。自社で広告アカウントを管理し、日々の運用、施策立案・実行、場合によってはクリエイティブの制作なども自社で行うケースもあります。

近年自社の広告運用をインハウス化する企業が増えており、導入を検討されている企業も多いと思います。しかしながら、メリット・デメリットをしっかり把握してから取り組まないと、期待していたような結果は得られず失敗に終わることも少なくありません。

本記事では広告主がインハウス化を検討する上で注意すべき点や、事前に考慮すべき点についてお話しします。

目次

  1. インハウス化のメリット・デメリット
  2. インハウス化の成功パターンとは?
  3. 完全なインハウス化にこだわりすぎない

インハウス化のメリット・デメリット

インハウス化のメリット・デメリット

インハウス化することで得られるメリットもあれば、デメリットもあります。恐らくインハウス化を検討する時に「広告運用手数料の削減」という点から検討されることが多いと思いますが、デメリットも十分に理解した上で進める必要があります。

本章ではインハウス化のメリット、デメリットをお伝えします。

インハウス化のメリット

まずはインハウス化で得られるメリットからお話しします。メリットを箇条書きにすると以下が挙げられます。

  • コスト削減できる
  • ノウハウを社内に蓄積できる
  • 意思決定から施策実行までスピーディに対応できる

ひとつひとつ見ていきましょう。

コスト削減できる

これが最大のメリットと言っても良いでしょう。代理店に支払う広告運用手数料を削減できるという観点からインハウス化を検討するケースが多いと思います。
一般的に代理店の広告運用手数料は平均して広告費の20%です。仮に毎月1,000万円の広告費を使っている場合、200万円の広告運用手数料になります。使っている広告費が多くなればなるほど、ここの広告運用手数料も多くなりますので、コスト削減となった時に最初の検討の土台に上がってくるのが代理店への広告運用手数料の削減でしょう。

ノウハウを社内に蓄積できる

代理店に運用を任せていると、実施した施策の状況や直近までの実績などをレポーティングしてくれますが、自分達で運用していない場合、なかなか自社にそのノウハウは残りにくいものです。
自社で運用していると、自社サービスや商品によりマッチした施策は何なのか、どういうやり方でやると成果が得やすいのか、ノウハウとして蓄積されていきます。自社に特化したノウハウですので、今後ビジネスを拡大していくための貴重な財産となります。

意思決定から施策実行までスピーディに対応できる

代理店に依頼している場合、どうしても即日対応というわけにはいかない場合があります。代理店は多くのお客様を担当しているため、期待しているスピード感で動いてくれないこともあると思います。そういったスピード感に不満というところから、インハウス化を検討される企業も多いでしょう。
その点インハウスでは、自分がやるかやらないかだけなので、施策の決定から実行までのスピードは上げることができるでしょう。

インハウス化のデメリット

インハウス化のデメリット
もちろん、インハウス化は良いことだけではありません。良いこともあれば悪いこともあります。デメリットを箇条書きにすると以下になります。

  1. 工数がかかる
  2. 最新の広告媒体情報が入ってこない
  3. 他社事例やノウハウがない
  4. 人材育成に時間がかかる

こちらもひとつひとつ見ていきましょう。

工数がかかる

まずとにかく広告運用は工数がかかります。これまで代理店にお願いしていたアカウント開設、設定回りから日々の調整、施策の立案・実行、場合によってはレポートの作成などすべて自社で対応することになります。代理店では自社ツールを使ってレポート作成を自動化していたり、設定回りのオペレーションを専門に担当する部署があったり、複数名で1社を担当し、工数を分散しながら対応しています。こういったことをすべて自社で対応しないといけなくなるため、事前にどの程度工数がかかるのか、どの程度そこに時間を割けるのか、見極めておく必要があります。

また、広告媒体側との調整や問い合わせも発生します。ここもこれまでは代理店が代行してくれていた部分です。時に新しい広告媒体の申し込みや、価格の調整、予期せぬ不具合に関する問い合わせ、設定に関する質問等々をする必要が必ず出てきます。これらもインハウス化以降は、自社で対応していくことになります。こういったやり取りにも意外と時間はかかってしまうものです。

最新の広告媒体情報が入ってこない

これも代理店を使わないことによる大きなデメリットです。代理店はたくさんの広告媒体社とお付き合いし、たくさんのクライアントを抱えています。それゆえに最新の広告媒体情報や、業界の最新の動向など情報をたくさん持っています。情報は非常に重要で、競合他社が代理店を使っていて、最新の情報を取得している場合、施策面から遅れを取ってしまうこともあります。情報は鮮度も重要なので、いかに早くここの情報を取得できるかもポイントとなります。インハウス化すると、この辺の情報が入手しにくくなる点も考慮が必要でしょう。担当者が様々な広告媒体社とお付き合いがあるケースもあるとは思いますが、競合情報や他社での成功パターンまでを把握しているケースは稀です。そういった人材がそもそも社内にいない場合は、情報の入手経路は確保しておくことをお勧めします。

他社事例やノウハウがない

自社のノウハウは貯まっていく一方、他社ではどういうことをやっているのか、自社では思いつかない成功事項などが入ってきにくい状況になります。時には業界が全く違う企業の成功パターンが実は貴社にも当てはまるケースもあります。代理店では様々な業界のクライアントを抱えていますので、色々な施策の成功・失敗パターンを把握しています。これらの情報を持っているか、いないかによってもビジネスの成長スピードに差が出てしまうかもしれません。

人材育成に時間がかかる

そもそも社内で運用型広告の経験者がいない場合、一から広告運用を理解するためには膨大な時間がかかってしまいます。また教える人も社内にいない状況では運用者を育てるのはかなり厳しいと思います。手探りな状態から始めると、担当者も「相談できる人がいない」という状況になり、担当者の疲弊や、モチベーションダウンにも繋がりかねません。

また、経験者がいる場合でもその人に全て任せるという計画なら見直すべきでしょう。その人は当然、広告運用だけをするわけではなく、他にも様々な業務を抱えているはずです。また、代理店経験者ですと、代理店時代に散々運用は経験してきたため、事業会社側では広告運用以外の業務を経験したいと思っているかもしれません。そういった人のキャリアパスや、モチベーションも考慮が必要で、事前にしっかりコミュニケーションをとる必要があります。また一人詳しい人間がいるからといって、その人に頼り切ってしまうのは非常に危険です。メリットでもあるノウハウの蓄積はその人だけに留まり、突然の退職となった場合にノウハウは引き継がれない可能性があります。

上記の点から複数名でのチーム体制を構築できるかが肝になります。代理店であれば、プロモーションの規模感にもよりますが、ディレクション担当(1名:施策立案、全体設計)、運用担当者(1名:広告の運用)、オペレーター(2~3名:設定関連を担当)、クリエイティブ制作担当(1~2名)と業務を分担しています。ここまでではないにしろ、複数名(3~4名程度)で業務を分担して回していける体制を社内で構築できるか、十分に検討してみてください。

なお、削減できた広告運用手数料で経験者を採用するということも検討されているかもしれません。ただし、それは非常に難しいと認識しておいた方が良いです。実は広告運用経験者はなかなか市場に出回らないと言われています(特に優れた運用者は)。本当は自社で採用したいが、採用がうまくいかないため、半常駐でも良いから人材を探しているという話をよく聞きます。経験者を採用するのは非常に大変であると認識しておいた方が良いでしょう。

インハウス化の成功パターンとは?

インハウス化の成功パターン

インハウス化は試してみたいけど、失敗はしたくない。当然皆さんそう思うはずです。では、どのように進めるのが良いでしょうか?本章ではインハウス化を成功させる2パターンをご紹介します。

一部のみインハウス化する

すべてをインハウス化せず、一部の広告媒体のみインハウス化するやり方です。ハイブリッド版と呼んでも良いでしょう。

例えば、リスティング広告は近年自動化の方向には向かっているものの、まだ細かい業務も多いため、Facebook広告やLINE広告など一部のディスプレイ広告のみテスト的に自社で実施するケースです。この方法のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 自社で運用を回せるか小さい範囲でテストできる
  • うまくいかなかった場合、代理店に戻しやすい
  • 代理店から引き続き情報を入手できる

いきなりすべてをインハウス化するのは非常にリスクが大きいため、まずは一部のみインハウス化を試して結果をみるのも手ですね。

信頼できる代理店をパートナーにする

インハウス化する上での最大のデメリットと言っても良い「情報の不足」「相談する人がいない」という点を払拭するために、基本はインハウスで広告運用をしつつ、気軽に相談できる代理店をパートナーとして確保しておくパターンです。
現在は、インハウス化支援をしている代理店も多く存在します。広告運用のトレーニングや勉強会の実施はもちろん、困ったときに相談したり、設定上不明な点が出てきた時に質問できるというメリットがあります。

このパターンでは広告費の20%よりは低い手数料で対応してくれることも多いため、相談してみると良いでしょう。現時点でお付き合いされている代理店がこういったことも相談できる関係性であるとベストですね。「信頼できるパートナーがいるか」が、成功するか否かのキーとなるでしょう。

完全なインハウス化にこだわりすぎない

「完全なインハウス化にこだわりすぎない」、これが成功する秘訣といえるかもしれません。とにかくすべてを自社で完結させるというのは人員も必要ですし、非常に工数もかかります。人員・工数がかかるということはお金もかかるということです。広告運用手数料を削減した結果、社内のメンバーが運用業務に忙殺され、チームの雰囲気も悪くなり、生産性が下がってしまう可能性もあります。それでは本末転倒です。運用業務は代理店にまるっと任せて、自社では広告運用以外の業務を行うという割り切りも必要です。

もし貴社がインハウス化を検討されているなら、すべてをインハウス化するのではなく、一部は自社で試してみつつも、信頼できる代理店パートナーにも業務を任せて、“一緒に成長する”というように考えてみることをお勧めします。