Web広告を運用していれば、高頻度で関わることになるリターゲティング広告。その他の施策に比べて成果が出しやすく、また比較的簡単に設定することも出来ます。今回はそのリターゲティングについてお話ししていきたいと思います。
目次
リターゲティングとは
そもそもリターゲティングとは何かをご説明致します。リターゲティングとはすでにサイトに訪問したことがあるユーザーへ向けて広告を配信する広告メニューのことです。サイト訪問したことがあるユーザーは、商品・サービスに何らかの興味関心をもっている方が大部分で、リターゲティング広告で再アプローチすることで購入や申込みなどを促進できることが多く、その他の広告と比べて比較的成果が出やすいのが特徴です。ちなみにリターゲティングとリマーケティングを混同してしまいがちですが、リマーケティングはGoogle広告のプロダクト名となります。ここではリターゲティングに統一してお話を進めていきます。
リターゲティングの種類
リターゲティングの中にもいくつかの種類があります。代表的なものをご紹介します。
リターゲティング
一般的にリターゲティングといわれるのは、サイト訪問者をターゲットにした施策となります。訪問してから〇日のユーザーに対して広告を配信し、コンバージョン獲得へと繋いでいきます。タグを設置し、リターゲティングリストが作成されていれば、比較的簡単に広告配信することが可能です。配信する際は特定のクリエイティブを配信していきます。
動的リターゲティング
ダイナミックリターゲティングとも呼ばれており、訪問した際のユーザーの閲覧履歴や行動履歴に基づいて広告を配信します。配信される際の広告クリエイティブは、閲覧履歴を基に自動生成されることが特徴となります。Google広告、Yahoo!広告以外にも有名なリターゲティング媒体は存在しておりいくつかご紹介します。
Crite(クリテオ)・RTB House(アールティビーハウス)
クリテオは広告運用を行なっている方であれば、一度は名前を聞いたことがあるかもしれません。動的リターゲティングの代表的な媒体の一つで、Yahoo!などに比較的低単価で広告を配信することが可能です。またRTB Houseは成果報酬型のリターゲティング広告となり、各企業から注目されている広告媒体となります。
RLSA(Remarketing Lists for Search Ads)
検索広告向けのリターゲティング施策とも呼ばれています。サイト訪問したユーザーに対しては、興味関心が他ユーザーよりも高いと想定できるため、入札単価を引き上げるなどの調整を行うなどして活用します。つまり検索広告の中でも、確度の高いユーザーに対して広告配信を強化することが出来るため、成果の出しやすい広告メニューとなります。しかし、検索エンジン経由のサイト訪問者のみに絞り込む機能であるため、他施策と比べてコンバージョン獲得件数が大きく伸びにくいという特徴もあります。
タグの設定
リターゲティングを行なう為にまず最初に行うことはタグの設定となります。タグの設定に関してはサイトへ直接タグを貼る以外にタグマネージャーを使用する方法もあります。今回はタグマネージャーを使用すケースでお話しいたします。以下でご説明するのは、もっとも一般的なGoogle広告、Yahoo!広告のリターゲティングタグ設定に関するご説明です。
GTMなどのタグマネージャーを使用する場合
タグの設置作業がシンプルで且つ、今後のタグ管理のことを考えるとお勧めなのはタグマネージャーを使用してのタグ管理です。
タグマネージャーのタグを設置する
タグを全ページに貼り付けます。※今回はGoogle Tag Managerを用いて設定します
「Google Tag Manager」
- GTM(Google Tag Manager )のアカウントを開設
- 発行したGTMのタグを該当するサイトの全ページに貼り付ける
a.上部のタグはページの内のなるべく上に貼りつける。
b.下部のタグはの直後に貼り付ける。
タグマネージャー内で各種タグを設置
次にGoogle広告、Yahoo!広告の各種タグをそれぞれ設定します。
「Google Tag Manager タグの選択画面」
- Google広告のタグは、「Googleコンバージョントラッキング」「Google広告のリマーケティング」を使用して設置します。
- Yahoo!広告のタグは、「カスタムHTML」を利用して設置します。
また、Google広告の動的リマーケティングのタグ設置の場合は、商品詳細ページやカートなどページ種別に応じて個別のタグを設置する必要があります。Google広告の動的リマーケティングのタグ設置については下記のページに詳細が書かれておりますので、ご確認ください。
【2020年版】Google広告|動的リマーケティングタグの設定方法
タグの発火を確認する方法
次に、設置したタグが問題なく発火しているかを確認します。確認する方法は、管理画面のリターゲティングリストを目視で確認する方法とタグマネージャーを利用して確認する方法などがあります。今回はタグマネージャーを利用する場合の方法についてご紹介します。
「Google Tag Manager プレビュー画面」
- Google Tag Manager内のプレビューモードをクリック
- プレビュー対象のURLを入力して、startをクリック
- 「Google Tag Manager プレビュー画面」のように発火しているタグがTags Firedの欄に表示されていることを確認する
リスト作成時のチェックポイント
ここからは基本的なリスト作成方法や注意点についてご説明します。
特定の条件を基にユーザーリストを作成する
タグの設定を行ない発火が確認出来たら、次にリターゲティング用のユーザーリストを作成します。
ユーザーリストとは、ある特定の条件を基に抽出されたサイト訪問ユーザーのリストとなっております。例えば下記のようなリストを作ることが出来ます。
- サイト訪問した全てのユーザー
- 特定のページ(LP)から訪問したユーザー
- 商品の詳細ページを閲覧したユーザー
- 購入フォームまで到達したユーザー
- 購入直前の申込まで到達したユーザー
- 購入等のコンバージョンに達成したユーザー など
作成する際のチェックポイントを確認していきます。
リストの有効期限について認識する
各ユーザーリストには有効期限が設けられています。デフォルトは30日で設定されています。これはリスト対象となったユーザーに対して最大30日間はリスト対象者として広告を配信することになります。
「Google広告管理画面 タグマネージャー内の設定」
デフォルトでは30日間ですが、販売する商材により適切な期間は異なります。例えば、食料品ECなどの低価格商品では比較検討期間が短いため、訪問初日から数日までには購入を完了する事が考えられます。また、反対に家電ECや結婚式場などは検討期間が長くコンバージョンに至るまで数週間掛かる場合もあります。リターゲティングで販売を考えている商品・サービスの購入に至るまでの期間を把握して有効期限を設定しましょう。
では、自社のユーザーはコンバージョンするまでにどのくらいの時間がかかっているのか。それを調べる方法をご紹介します。下記はGoogle広告内のアトリビューション機能の一つです。ユーザーが広告をクリックしてから実際にコンバージョンされるまでの平均日数を確認することが出来ます。
「Google広告管理画面 アトリビューション・経路の指標」
なお、リスト設定時に過去にサイトを訪問したユーザーで、設定した条件に一致するユーザーをリストに含めることも可能です。リストの蓄積を待たずに配信が可能となるため、含めることをお勧めいたします。
有効期限別で必要以上に分割しない
以前は収集する期間によりユーザーリストの挙動は変わるため、下記のように分割して設定する動きが多く見られました。
- サイト訪問してから1日目のユーザーリスト
- サイト訪問してから3日目のユーザーリスト
- サイト訪問してから7日目のユーザーリスト
- サイト訪問してから14日目のユーザーリスト
- サイト訪問してから30日目のユーザーリスト
しかし、機械学習主流の現在では、データはまとめて学習促進させていくことが基本。データはなるべく分割させないことが重要になってきています。実際の購入に至るまでの期間を把握した上で、データをまとめるようにリスト作成して広告運用していきましょう。
コンバージョンユーザーは除外する
上記で設定するユーザーリストの利用方法は様々あります。ターゲットとして利用する以外に、コンバージョンしたユーザーに対しては除外ユーザーとして設定することも可能です。既に商品やサービスを利用している既存顧客に対して広告配信する場合は設定不要ですが、会員登録など新規ユーザーからのコンバージョンを促進したい場合は必ず設定しておきましょう。
リストサイズが小さくなりすぎない様にする
条件を増やすほど、対象となるリスト数は減っていきます。各広告媒体により稼働するために必要なリスト数が設けられており、この数を下回ると広告自体配信が出来なくなりますのでご注意ください。
媒体 | 必要なユーザー数・リーチ数 |
GDN | 100人以上 |
Google検索 | 1,000人以上 |
YouTube | 1,000人以上 |
Gmail広告 | 1,000人以上 |
Yahoo!広告 | 1,000件以上 |
フリークエンシーを意識する
リターゲティングの特徴の一つに「同じユーザーに広告を表示させ続けることが出来る」という点があります。同じユーザーに広告を当て続ける行為はコンバージョンの引き上げにも繋がりますが、ユーザー視点からすると「同じ広告ばかり見る」というネガティブな印象を与えることにもなりえます。そのため同じユーザーへ広告があたり続けることがないようにフリークエンシー設定を用いて調整を行っていきます。
「Google広告管理画面 フリークエンシー管理」
「Yahoo! ディスプレイ広告広告管理画面 キャンペーン設定」
また実績としてユーザー当たりにどれだけの広告を表示させたのかは下記から確認することが出来ます。
- Google広告:リーチの指標内にある「平均表示頻度」
- Yahoo!広告:レポート機能にある「平均接触回数」
広告稼働当初はフリークエンシー設定せずに配信して、実績をためていきましょう。その後、成果の落ち込みなどが見えたら、表示頻度を確認し、調整していきます。
URLを指定する際はドメイン以下を指定する
SSL 化も進み「https://」「http://」の両方が存在する場合があります。どのような状況でもリスト化されるようにURLを設定する際はドメイン以下を設定しましょう。
Google広告はモニタリングを設定する
Google広告にはモニタリングという機能が存在します。広告のターゲティングを変更することなく、オーディエンス別の掲載実績を確認したり、入札金額を調整することが出来る機能となります。モニタリング別に入札単価調整を行うことが出来るため、より精度の高い運用を行なうことが可能となります。
ターゲティングとモニタリングの違い
通常広告配信する際は、ユーザーを特定するためにターゲティング機能を使用しますが、モニタリングは設定しても直接ターゲティングに影響を与えることはありません。RLSAの推奨はモニタリング、リターゲティングの推奨はターゲティングです。
Google広告は拡張設定になっていないかチェック
気が付かずに設定してしまうことがあるのが、Google広告の拡張設定。設定するターゲットリストに基づき「リターゲティングリストに含まれるユーザーと類似したユーザーへ広告配信を拡張する機能」となります。リーチする数を増やしたい場合には設定してもよいですが、意図しないユーザーに対しても広告が配信される可能性があるため、もしチェックが入っている場合はオフにしておきましょう。
「Google広告管理画面 広告グループの設定」
成果を上げるためのリスト構成
これまではリターゲティングを行う際の基本的な設定・チェックポイントについて説明してきました。ここからは一歩進めて、成果を出すためのリターゲティング施策について考えてみたいと思います。
見込み度に応じてリストを作成する
リターゲティング運用成功させるためには、事前にユーザーのコンバージョン見込み度を把握しておくことが重要になります。見込み度の把握にはGoogle Analytics等を用いて分析します。
流入チャネル別にリストを作成
流入チャネルによりコンバージョン率は大きく異なります。例えば、サイト訪問直前に商品・サービスの良さを伝えられて訪問するアフィリエイトは、コンバージョン率が他チャネルと比べ高い傾向を示します。同様にブランドワード検索で流入したユーザーも同様に高いコンバージョン率となります。
反対にNewsサイトから訪問してきたユーザーや、比較サイトから訪問したユーザーは、訪問数は多いものの、コンバージョン率が安定しない傾向にあります。これらのリストをそれぞれ事前に作成しておきましょう。
- 自然検索で流入したユーザー
- Web広告から流入してきたユーザー
- アフィリエイトサイトから流入してきたユーザー
- 比較サイトから流入してきたユーザー
- Newsサイトから訪問してきたユーザー など
深度別のユーザーリストの作成
ユーザーのサイト閲覧状況により、コンバージョンに寄与するかどうかをある程度判断することが出来ます。
- サイトTOP訪問ユーザー
- 商品詳細ページ津蘭ユーザー
- 会社概要閲覧ユーザー
- カートフォーム到達ユーザー など
例えば、上記各ユーザーはコンバージョンに至る確度が異なります。「サイトTOP訪問ユーザー」はサイト流入の入り口として使用されることが多く、訪問数は多いですが訪問するユーザーのニーズも様々であることが多いです。対して「カートフォーム到達ユーザー」は、数は少なくなるもののコンバージョンする直前の動きであるため、コンバージョンに至る確率は高い傾向となります。こちらもチャネル別と同様にそれぞれリスト化しておきましょう。
Google Analyticsでユーザーリストを作成可能
ユーザーリストはGoogle広告、Yahoo!広告の管理画面から作成することが出来ます。しかし、Google Analyticsのデータを基に作成することも可能で、サイト内のユーザーの動きを参照してリスト化することも出来ます。
- 商品詳細ページを3ページ以上閲覧したユーザー
- サイトの滞在時間が10分以上のユーザー
- ECサイトで過去購入実績のあるユーザー など
Google Analyticsのデータを基にしたリストは、Google広告と連携して使用することが可能です。
全リストを用いてコンバージョン獲得件数の最大化を図る
各チャネルの獲得効率の良いリストを中心にリターゲティングを配信しつつ、確度は落ちるもののユーザー数が多いリストを用いてコンバージョン件数も集めていきます。見込み度に応じてリストを作成することで、結果の出せるリターゲティング運用を行うことが可能になります。
チャネル別×深度別のリストを作成すべきか
より細かくリストを分けた方が、予算調整の観点からも良いのではないかという考えが出てくるかと思います。しかし、サイトの訪問ユーザーのボリュームにも左右されますが、基本的にリストを細かく分けた運用はお勧めしません。機械学習が主流の現在は、データを可能な限りまとめて、機械学習を促進させた方が結果に結びつきやすいためです。運用しやすさのためのリスト分けではなく、機械学習を促進するためのリスト分けを意識して運用を行いましょう。
リターゲティングに頼りすぎない
リターゲティングは検索広告に並ぶ程、Web広告では成果を出しやすい施策となります。そのため、広告運用を始めたばかりの方はリターゲティング中心の施策を組んでしまいがちです。しかし今後の拡大性のことを考えて、その他の打ち手も必ず探っていきましょう。
新規ユーザーのアプローチも合わせて行っていく
サイト訪問したユーザーに対して再アプローチするのがリターゲティングの基本的な動きです。そのためリターゲティング中心の施策では、商品・サービスを認知しているユーザーへのアプローチが中心となり、新規ユーザーへのリーチが手薄になりがちです。ビジネスを拡大するには常に新規層への働きかけが重要であることを考えると、リターゲティングを行うだけでは片手落ちだということがわかるかと思います。常に新しい広告や技術にアンテナを張って挑戦していくことが重要なのです。
リターゲティングの代替案を模索する
成果を出しやすいリターゲティング広告ですが、今後は使用することが出来なくなると言われています。リターゲティングはcookie(クッキー)というブラウザ上のユーザー情報を用いて追跡を行なっていますが、 プライバシー保護の観点で今後はcookie(クッキー)の使用がどんどん制限されていくからです。なお、登場までにはもうしばらく時間がかかるかと思いますが、Googleは既に次の技術を模索しています。広告を運用する我々も立ち止まることなく、新しい施策を模索していくことが重要になります。